司法試験・予備試験実践論証

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要件事実1売買・貸金

 

要件事実は、現段階では現行法に対応したものになっています。

 

 

 

売買契約に基づく代金支払請求訴訟

 

売買代金支払請求

 

 

請求の趣旨

 

 

被告は、原告に対し、2000万円を支払え。

 

 

訴訟物

 

売買契約に基づく代金支払請求権 1個

 

 

請求原因

 

 売買契約の締結

  ⅰ 目的物

  ⅱ 価額

 

要件事実としては債権発生原因のみを主張すれば足りる。

 

冒頭規定説によれば売買契約の発生原因は555条に定められており、その本質的な要素は目的物と代金である。したがって、ⅰ、ⅱが必要。

   

記載

 

原告は、被告に対し、平成23年3月3日、甲土地を代金2000万円で売った。

 

日付は訴訟物の特定に不可欠ではないため、時的因子(cf.時的要素)。

 

 

抗弁

 

消滅時効の抗弁

 

要件事実

 ①権利を行使することができる状態になったこと

 ②①のときから10年間が経過したこと

 ③援用の意思表示をしたこと

 

「権利を行使しなかったこと」は147①が権利行使を中断事由としていることから再抗弁となる。

①が請求原因に現れている場合は①不要。

 

記載

平成33年3月3日は経過した。

被告は、原告に対し、平成33年9月29日、上記時効を援用した。

 

平成23年3月3日」は時的要素。

 

 

期限の定めの再抗弁 

 

当該期限到来時からの消滅時効の主張は当初の消滅時効の抗弁とは別個の選択的抗弁(再々抗弁ではない)

 

 

時効中断の再抗弁 

 

中断解消時からの再度の消滅時効完成は当初の時効とは別個の抗弁

 

 

時効援用権の喪失の再抗弁 

 

時効利益の放棄の主張は過剰主張

∵時効利益の放棄のためには債務者が時効の完成を知っていたことまで主張する必要がある。時効利益の放棄の主張には時効援用権の喪失の主張が含まれている。

 

履行期限の抗弁

 

要件事実

 ①履行期限の合意

 

記載

原告と被告は、本件売買契約の際、代金支払期日を平成23年10月31日とするとの合意をした。

 

同時履行の抗弁

 

実体法上の要件

 A 同一の双務契約から生じた相対立する債務の存在

 B 相手方の債務が履行期にあること

 C 相手方が債務の履行又はその提供をしないで履行の請求をしたこと

 

要件事実

 ①権利主張

 

Aは請求原因において明らかになっているため不要。

 

Bは一般に期限の定めのない契約は契約成立と同時に履行請求可能であるため不要。履行期限の合意は附款であり、原告側が主張立証責任を負う。

 

Cは債務の履行により利益を受ける原告側が債務の履行につき主張立証責任を負うため不要。

 

同時履行の抗弁は権利抗弁であるため権利行使の主張が必要。→①

 

記載

被告は、原告が甲土地の所有権移転登記手続及び引渡しをするまで代金の支払いを拒絶する。

 

先履行の合意の再抗弁

 

反対給付の履行の再抗弁

弁済の提供をした旨の主張は主張自体失当。

∵一回の弁済の提供によっては同時履行の抗弁権は消滅しない(同時履行の抗弁権の行使効果は弁済の提供によって失われない)(失わせるためには履行の完了が必要)。

Cf.一回の弁済の提供によって履行遅滞の違法性は阻却される(解除の主張に対して同時履行の抗弁権による違法性阻却が認められなくなる)(同時履行の抗弁権の存在効果は弁済の提供によって失われる)。

 

相殺の抗弁

 

実体法上の要件

 A 自働債権及び受働債権の発生原因事実

 B 両債権が同種の目的であること

 C 両債権が弁済期にあること

 D 債務の性質が相殺を許さないものでないこと

 E 相殺の意思表示

 

要件事実

 ① 自働債権の発生原因事実

 ② 相殺の意思表示

 ③ 同時履行の抗弁権の発生障害又は消滅原因となる事実(自働債権が双務契約から生じた場合)

(④ 弁済期の定めとその到来(自働債権が貸借契約である場合))

 

 受働債権の発生原因事実は請求原因で現れているので不要。→①

 

 Bは請求原因及び①で通常現れるため不要。

 

 Cは自働債権が売買契約によるものの場合請求原因で現れているため不要。

 

 Dはただし書き。再抗弁であるため不要。

 

 E 相殺権は形成権であるから必要。→②

 

 ③…自働債権が双務契約から生じた場合、自働債権に同時履行の抗弁権が付着していることがAにより現れている。遅滞の違法性阻却の効果や相殺を封じる効果は同時履行の抗弁権が存在すれば生じ、行使は必要ないとの通説(存在効果説)に立つ場合、①を被告が主張することにより同時履行の抗弁権の効果が生じることになるから、③にあたる事実を合わせて主張しなければ主張自体失当となってしまうため必要(せり上がり)。

  これは弁済の提供の主張立証で足りる。

   Cf.反対給付の履行の再抗弁

 

 自働債権が貸借型の場合、契約の終了も主張しなければならないので④が必要となることに注意。

    

記載

被告は、原告に対し、平成23年10月17日、乙パソコンと丙カメラを代金100万円で売った。

被告は、原告に対し、同日、上記売買契約に基づき、上記のパソコンとカメラを引渡した。

被告は、原告に対し、同年12月1日、上記売買代金債権をもって、原告の本訴請求債権とその対当額において相殺するとの意思表示をした。

    

代物弁済の抗弁

 

実体法上の要件

 A 本来の債務の存在

 B 弁済に代えて目的物の所有権を移転するとの合意

 C 債務者が合意当時、目的物を所有していたこと

 D Bに基づいて動産の引渡しまたは不動産の所有権移転登記手続をしたこと

      

要件事実

 ① 弁済に代えて目的物の所有権を移転するとの合意

 ② 債務者が合意当時、目的物を所有していたこと

 ③ ①に基づく動産の引渡しまたは不動産の所有権移転登記手続をしたこと

 

Aは請求原因に現れているので不要。(所有権移転原因として代物弁済を主張する場合には必要であることに注意)

 

Bは代物弁済契約締結の事実であり必要。→①

 

C 代物弁済は所有権の移転によって債務を消滅させるものであるから所有権移転の前提として必要。→②

 

代物弁済契約は諾成契約(諾成契約説)であり、対抗要件具備は契約の成立要件ではなく、債務の消滅のための要件であるから、「①に基づく」が必要(要物契約説であれば契約の成立要件であるから「①に基づく」は不要)。→③

なお、目的物の所有権は契約時に移転するため、所有権取得原因として代物弁済を主張する場合には、対抗要件具備の事実の主張は不要。

 

記載

原告と被告は、平成23年10月17日に、請求原因の売買代金の弁済に代えて、乙土地の所有権を移転するとの合意をした。

被告は、1の当時、乙土地を所有していた。

被告は、原告に対し、同日、1の合意に基づき、乙土地につき所有権移転登記手続をした。

 

民法総則に関する抗弁

 

未成年取消の抗弁 

 未成年者の詐術の再抗弁

 

  法定代理人の同意の再抗弁

 

通謀虚偽表示の抗弁

 要件事実

 ①通謀

 ②虚偽表示

 

記載

 

 

XとYは、本件売買契約の際、いずれも甲土地を売買するつもりがないにもかかわらず、その意思があるように仮装することを合意した。

 

詐欺の抗弁

 要件事実

 

 ①Xによる詐欺の事実

 ②Yによる取消の意思表示

 

記載

 

Xは、本件売買契約の締結に際し、Yに対し、甲土地の近隣に新駅の開発計画はなかったにもかかわらず、この計画があると告げ、Yをしてそのように信じさせたうえで、本件売買契約を締結させた。

 

Yは、平成25年2月1日、Xに対し、本件売買契約を取り消す旨の意思表示をした。

 

錯誤の抗弁

 

 要件事実

 ①意思表示の錯誤であること

 ②その錯誤が法律行為の要素に関すること

 ③動機が相手に表示されたこと(動機の錯誤の場合)

 

記載

Yは、本件売買契約当時、甲土地の近隣に新駅の開発計画はなかったにもかかわらず、この計画があるものと信じていた。

Yは、本件売買契約の締結に際し、Xに対し、上記計画に備えて商業施設を建設するために甲土地を買い受ける旨を述べた。

 

「要素」の錯誤であることが明らかになるように主張する。

 

 

債務不履行解除の抗弁  

 

実体法上の要件

 A 債務不履行

 B 債務者の帰責性(帰責性不要説:重大な契約違反)

 C 違法性

 D 催告

 E 催告後相当期間経過後の解除の意思表示

 

要件事実

 ① 催告

 ② 催告後相当期間の経過

 ③ 相当期間経過後の解除の意思表示

 ④ 催告に先立つ反対給付の履行の提供

 

A 債務不履行は催告+相当期間経過で足りる。

 

B 帰責性必要説に立っても、債務不履行が主張立証されれば帰責性も原則として基礎づけられることに照らし、帰責性がなかったことは解除を争う者が再抗弁として主張すべき事実であるため、不要。帰責性不要説に立てば、重大な契約違反が実体法上は要件となるが、軽微な不履行であることは、契約解除の主張をした時点で通常明らかになると考えられるため、不要(この場合解除の主張が主張自体失当となる)。

 

催告に相当期間を定めたことは要件とならず、期間を定めない催告や不相当な期間を定めた催告であっても、相当期間が経過すれば解除可能。*1

 ∵期間の相当性の判断の危険を、解除を主張する者に負わせるのは不当だから。

 

「〇月〇日までに履行がない場合には解除する」旨の意思表示は、「履行がないこと」を停止条件とする停止条件付きの解除の意思表示にも見えるが、かく解すると、「履行がないこと」をも解除を主張する者が主張立証しなければならなくなってしまう。しかし、「履行があったこと」は解除を争う者が主張立証責任を負うべき事実であるので、かかる意思表示は「〇月〇日が経過した時点で解除する。(ただし、〇月〇日までに履行があった場合にはこの限りでない。)」という停止期限(「〇月〇日」)の付いた解除の意思表示であると解すべきである。

停止期限付き解除の意思表示をした場合、②③は停止期限付き解除の意思表示、催告期間の経過となる。

 

付遅滞のための催告(412条3項)は解除のための催告と別に行う必要はないため、主張不要。*2

 

無催告解除特約の場合、履行期の経過の主張が必要(催告によって履行遅滞に陥る(412条3項)ことがないため)。

 

履行不能解除の場合、④は不要。

 

瑕疵担保による解除の抗弁

 

要件事実

 ① 契約時に、通常人が普通の注意で発見できない瑕疵の具体的事実

 ② 解除の意思表示

 

再抗弁

 悪意有過失

 契約をした目的を達することができること

 除斥期間経過

 

記載

売買契約締結時にどのようにエンジンが故障していたかの具体的主張

Xは、平成25年2月7日、Yに対し、売買契約を解除する旨の意思表示をした。

 

 

貸金返還請求訴訟

 

貸金返還請求

 

請求の趣旨

被告は、原告に対し、2000万円を支払え。

 

訴訟物

消費貸借契約に基づく貸金返還請求権 1個

 

実体法上の要件

 A 金銭消費貸借契約の成立

 B 金銭消費貸借契約の終了

 

請求原因

 ①金銭消費貸借契約の成立

  ⅰ 金銭返還合意

  ⅱ 金銭交付 (ⅰ,ⅱ合わせて「貸付」)

 ②金銭消費貸借契約の終了

  ⅰ 返還時期の合意

  ⅱ 返還時期の到来

 (返還時期の合意ない場合、412条3項)

  ⅰ 債務の履行を催告したこと

  ⅱ 催告後相当の期間が経過したこと

 

記載

原告は、被告に対し、平成22年6月15日、100万円を貸し付けた。

原告と被告は、1に際し、返還時期を平成22年9月1日と定めた。

平成22年9月1日は到来した。

 

抗弁

 

弁済の抗弁

 

要件事実

 ①債務者が債権者に対し給付をしたこと

 ②①の給付がその債務の履行としてされたこと

 

記載

被告は、原告に対し、平成22年9月1日、上記消費貸借契約に基づく貸金返還債務の履行として100万円を支払った。

 

附帯請求

 

利息請求権

 

要件事実

 ① 元本債権の発生原因事実

 ② 利息の約定

 ③ 利息を生じるべき一定期間の経過

 

記載

Xは、平成24年2月11日、Yに対し、500万円を弁済期平成25年2月10日、利息年5%とする約定で貸し付けた。

平成25年2月10日が到来した。

 

 

*1:大判昭和2・2・2、最判昭和31・12・6

*2:大判大正6・6・27