司法試験・予備試験実践論証

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【論証】刑法総論1構成要件⑴実行行為

実行行為とは、特定の構成要件に該当する、構成要件的結果発生の現実的危険を有する行為をいいます。

 

実行行為のところで主に問題になるのは間接正犯(論証としては正犯性の有無として書く)と不作為犯についてです。

 

 

 

間接正犯

間接正犯は実行行為該当性として書くことも可能(他人を利用する行為が実行行為にあたるか)ですが、間接正犯という形態が正犯にあたるか、という観点から書く方がおすすめです。

 

【論証:間接正犯】

  他人を利用して犯罪を実現する行為を正犯として処罰することができるか。間接正犯の正犯性が問題となる。

 正犯とは自己の犯罪を行う者をいうが、他人の行為を利用して犯罪を実現する場合であっても、①被利用者を利用して特定の犯罪を自ら実現する意思があり、②客観的にも被利用者の行為をあたかも道具のごとく一方的に利用・支配して一定の構成要件を実現したといえる場合には、自己の犯罪を行ったと評価でき、間接正犯として正犯性を認めてよいと解する。*1

 

あてはめでは、被利用者に(利用者が実現しようとした犯罪についての)規範的障害が存在したか否かが重要となります。

 

道具利用が認められる例としては、是非弁別能力のない者の利用*2、意思を抑圧された者の利用*3、(利用者が実現しようとした犯罪についての)故意のない者の利用*4などがあります。故意ある幇助的道具の利用(被利用者には完全な故意があるが、正犯者意思がなく、専ら他人のために行おうという共犯者意思しかない場合)については、多数説は間接正犯の成立を否定し、教唆犯の成立を肯定しています。*5

 

正犯性が認められる場合、利用行為が実行行為にあたることになります。残りの構成要件については通常の正犯と同様に検討します。

 

不作為犯

 

【論証:不作為犯】 

 実行行為とは、特定の構成要件に該当する、法益侵害の現実的危険性を有する行為をいうところ、不作為によっても法益侵害は惹起され得るから、不作為も実行行為にあたり得る。

 もっとも、不真正不作為犯においては、いかなる不作為が処罰されるかが明確でない。また、不作為が処罰されることによって自由が制約される度合いは作為犯のそれより大きい。そこで、不真正不作為犯の成立範囲を妥当な範囲に限定し、その限界を明確にするため、作為と同価値性を有する不作為のみが実行行為にあたると解する。具体的には、作為義務作為の可能性・容易性が必要である。*6

 

不作為の実行行為性は法益侵害の危険性が現実的なものとなった時点で肯定され得ます。

 

たとえば、

幼児を放置して外出した場合、殺人罪の実行行為となるのは外出時でなく、幼児が衰弱して死の危険が生じた時点です。

 

作為義務は法令契約先行行為排他的支配及び保護の引受けを総合的に考慮するのが近時の判例・通説です。(特に排他的支配、保護の引受けが中心的考慮要素となります) 

*1:基本p.302,314

*2:基本p.315

*3:肯定例:最決昭和58年9月21日〈百選74〉、最決昭和59年3月27日、最決平成16年1月20日〈百選73〉、否定例:最決平成13年10月25日、広島高判昭和29年6月30日

*4:基本p.317,318

*5:基本p.318,319

*6:基本p.80~88