要件事実2所有権に基づく土地明渡請求・不動産登記手続請求
所有権に基づく不動産明渡請求訴訟
土地明渡請求
請求の趣旨
被告は、原告に対し、甲土地を明け渡せ。
訴訟物
所有権に基づく返還請求権としての土地明渡請求権 1個
実体法上の要件
A その物を所有していること
B 相手方がその物を占有していること
C 相手方がその物に対する正当な占有権原を有していないこと
請求原因
①所有
ⅰ 権利自白が成立する時点での所有
ⅱ 原告の所有権取得原因(前前主の所有について権利自白のときは前主の所有権取得原因も)
②相手方占有
Cは抗弁。
∵占有権原として考えられるものは多数あるため、占有しているものに立証させるのが公平
登記の具備の主張は不要。
∵意思主義(176)
被告の占有だけで被告が「第三者」にあたることは基礎づけられない。
→せり上がりはない。
記載
原告は、平成22年9月9日当時、甲土地を所有していた。
被告は、甲土地を占有している。
抗弁
所有権喪失の抗弁
要件事実
①原告以外の者の所有権取得原因事実
所有権喪失の抗弁として代物弁済を主張するとき
① 債務の発生原因事実
② 本来の債務の弁済に代えて物の所有権を移転するとの合意
債務者所有は請求原因に現れているため不要。諾成契約説によれば引渡し不要。
記載
原告は、被告に対し、平成22年9月9日、甲土地を代金2000万円で売った。
解除の再抗弁
解除前の第三者の再々抗弁(権利保護要件説(対抗要件説に立った場合は予備的抗弁))
要件事実
① 解除に先立つAY間の売買契約締結
② 解除に先立つ①に基づく対抗要件具備
対抗要件の抗弁
実体法上の要件
A 登記の欠缺を主張する正当の利益を有する者(177の「第三者」)
要件事実
① 所有権取得原因
② 権利主張
①を主張すれば177の「第三者」にあたることは基礎づけられる(対抗関係)。
②は当事者の意思尊重の見地から必要。
記載
Aは、被告に対し、平成22年2月2日、甲土地を代金2000万円で売った。
原告が所有権移転登記を具備するまで、原告の所有権取得を認めない。
対抗要件具備による所有権喪失の抗弁
実体法上の要件
A 177の「第三者」
B 対抗要件具備
要件事実
① 所有権取得原因
② ①に基づく対抗要件具備
記載
Aは、被告に対し、平成22年2月2日、甲土地を代金2000万円で売った。
被告は、同年4月9日、上記売買契約に基づき、甲土地につき所有権移転登記を具備した。
背信的悪意者の再抗弁
要件事実
① 相手方の悪意
② 背信性を基礎づける評価根拠事実
占有権原の抗弁
要件事実(占有権原として賃借権を主張する場合)
① XY間での賃貸借契約の締結
② ①に基づく引渡し
請求原因で現れたYの占有が、①の契約に基づく適法なものであることを示すため、②が必要。
記載
Xは、平成24年12月12日、Yに対し、甲土地を賃料1か月20万円、賃貸期間を同日から3年間の約定で賃貸するとの合意をした。
Xは、同日、Yに対し、①の賃貸借契約に基づき、甲土地を引き渡した。
建物収去土地明渡請求
請求の趣旨
被告は、原告に対し、乙建物を収去して甲土地を明け渡せ。
訴訟物
所有権に基づく返還請求権としての土地明渡請求権 1個
「建物収去」の主文は、執行方法の特定にすぎない。
Cf.賃貸借契約の終了に基づく場合
請求原因
① X甲土地所有
② 甲土地上の乙建物の存在
③ Yの乙建物所有
記載
Xは、甲土地を所有している。
Yは、甲土地上に乙建物を所有して、甲土地を占有している。
抗弁
占有権原の抗弁
建物所有権喪失の抗弁
要件事実
①建物所有権の移転原因事実
登記名義保有の再抗弁
要件事実
① Yもと所有当時、乙建物にY名義の建物登記が存在したこと
② ①がYの意思に基づく登記であること
③ 乙建物にY名義登記が存在していること
建物退去土地明渡請求
請求の趣旨
被告は、原告に対し、乙建物を退去して甲土地を明け渡せ。
訴訟物
所有権に基づく返還請求権としての土地明渡請求権 1個
請求原因
① Xが甲土地を所有していること
② 甲土地上に乙建物が存在していること
③ Zが乙建物を占有していること
抗弁
占有権原の抗弁
要件事実
① XY間の甲土地賃貸借契約締結
② ①に基づく甲土地の引渡し
③ ②の後、Yにより甲土地上に乙建物建築
④ YZ間の乙建物賃貸借契約締結
⑤ ④に基づく乙建物の引渡し
土地賃貸人に対しては建物賃借権を対抗可
∵土地所有者は、土地賃借人が土地上の建物を他人に賃貸することも当然に予想、認容
記載
Xは、平成24年8月12日、Yに対し、甲土地を、賃料1か月5万円の約定で賃貸した。
Xは、同日、Yに対し、①の賃貸借契約に基づき、甲土地を引き渡した。
Yは、②の後、乙建物を甲土地上に建築した。
Yは、平成25年1月10日、Zに対し、乙建物を、賃料1か月10万円の約定で賃貸した。
Yは、同日、Zに対し、④の賃貸借契約に基づき、乙建物を引き渡した。
不動産登記手続請求訴訟
所有権移転登記抹消登記手続請求
請求の趣旨
被告は、甲建物について別紙登記目録記載の所有権移転登記の抹消登記手続きをせよ。
訴訟物
所有権に基づく妨害排除請求権としての所有権移転登記抹消登記請求権 1個
請求原因
① 所有
② 相手方名義の所有権移転登記が存在
登記は事実上の推定力を有するに過ぎないから、②により相手方の所有権が法律上推定されることはない。
記載
原告は、平成21年7月1日当時、甲建物を所有していた。
甲建物について、別紙登記目録記載の被告名義の所有権移転登記がある。
抗弁
所有権喪失の抗弁
要件事実
① 原告以外の者の所有権取得原因
記載
原告は、Aに対し、平成21年7月1日、甲建物を代金800万円で売った。
所有権移転登記手続請求
請求の趣旨
被告は、原告に対し、甲土地について、平成13年6月1日時効取得を原因とする所有権移転登記手続きをせよ。
時効取得の効果は起算点にさかのぼる(民法144条)ため、登記原因の日付は占有開始日。
真正な登記名義の回復を原因とするときは日付は不要。
訴訟物
所有権に基づく妨害排除請求権としての所有権移転登記請求権 1個
実体法上の要件
A 所有
◦短期時効取得(162条2項)
ⅰ 時効の完成
①所有の意思
②平穏かつ公然
③他人の物
④10年間占有
⑤占有開始時に善意
⑥無過失
ⅱ 援用
B 相手方名義の所有権移転登記の存在
請求原因
①所有
ⅰ 時効の完成
A ある時点で占有していたこと
B Aの時点から10年経過した時点で占有していたこと
C Aの時点で自己に所有権があるものと信じることについて無過失であったことの評価根拠事実
(ア)、(イ)、(オ)は186Ⅰで不要
(ウ)は自己物についても時効取得がありうるため不要
(エ)は186Ⅱで前後の占有でOK→A、B
(カ)は規範的要件であるから評価根拠事実が主要事実→C
ⅱ 援用
②相手方名義の所有権移転登記
記載
原告は、平成13年6月1日、甲土地を資材置き場として占有していた。
原告は、平成23年6月1日経過時、甲土地を資材置き場として占有していた。
無過失の評価根拠事実
(1)Aは、平成13年6月1日当時、甲土地を資材置き場として占有していた。
(2)原告は、平成13年6月1日、Aから甲土地を1000万円で買った。
原告は、被告に対し、平成23年9月5日、甲土地を時効取得した旨伝えた。
甲土地について別紙登記目録記載の被告名義の所有権登記がある。
抵当権設定登記抹消登記手続請求
請求の趣旨
被告は、甲建物について、別紙登記目録記載の抵当権設定登記の抹消登記手続をせよ。
訴訟物
所有権に基づく妨害排除請求権としての抵当権設定登記抹消登記請求権 1個
実体法上の要件
A 所有
B 相手方名義の抵当権設定登記の存在
C 登記が登記保持権原に基づかないこと
請求原因
① 所有
② 相手方名義の抵当権設定登記の存在
記載
原告は、平成22年7月1日当時、甲建物を所有していた。
甲建物について、別紙登記目録記載の被告名義の抵当権設定登記がある。
抗弁
登記保持権原の抗弁
実体法上の要件
A 有効な抵当権登記の存在
ⅰ 被担保債権の発生原因事実
ⅱ 抵当権設定契約を締結した
ⅲ ⅱの当時の設定者の所有
要件事実
① 有効な抵当権登記の存在(登記の実体的有効要件)
ⅰ 貸付(被担保債権の発生原因事実)
ⅱ 抵当権設定契約締結
ⅲ ⅱの当時、設定者所有
②登記がⅱに基づく(登記基づく、登記の手続的有効要件)
記載
被告は、原告に対し、平成22年7月1日、1000万円を貸し付けた。
原告と被告は、平成22年7月1日、原告のⅰの債務を担保するため、甲建物に抵当権を設定するとの合意をした。
請求原因2の登記は2の抵当権設定契約に基づく。
ⅲにあたる事実は請求原因で現れている場合には主張不要。
所有権喪失の抗弁
通謀虚偽表示の再抗弁
定承継取得説からは、再々抗弁ではなく、所有権喪失の抗弁、通謀虚偽表示の再抗弁を前提とした予備的抗弁となる。
要件事実
① YZ間での被担保債権の発生原因事実
② YZ間での上記被担保債権を担保するための本件不動産への抵当権設定契約締結
③ ②の際、ZがXY間の売買契約が通謀虚偽表示であることについて善意
④ 抵当権設定登記が②の抵当権設定契約に基づく
記載
Zは、平成24年11月11日、Yに対し、500万円を貸し付けた。
YとZは、同日、①の債務を担保するため、甲土地に抵当権を設定するとの合意をした。
Zは、②の契約の際、XY間の売買が仮装されたものであることを知らなかった。
Z名義の抵当権設定登記は、②の契約に基づく。