司法試験・予備試験実践論証

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要件事実3賃貸借・動産

 

 

 

賃貸借契約に関する請求

賃料請求

請求の趣旨

被告は、原告に対し、15万円(及びこれに対する平成24年11月1日から支払い済みまで年5分の割合による金員)を支払え。

 

訴訟物

賃貸借契約に基づく賃料請求権

(及び履行遅滞に基づく損害賠償請求権)

 

請求原因

 ① 賃貸借契約の締結

 ② ①の契約に基づく引渡し

 ③ 賃料支払い債務を発生させる一定期間の経過

 ④ 支払時期の到来

 

賃料は目的物を一定期間賃借人の使用収益が可能な状態に置いたことに対する対価として発生するものであるから、②、③が必要。

 

記載

Xは、平成24年10月1日、Yに対し、乙建物を賃料月額15万円の約定で賃貸した。

Xは、①の賃貸借契約に基づき、Yに乙建物を引き渡した。

平成24年10月31日は到来した(平成24年10月31日は経過した)。

 

抗弁

 

賃借目的物の履行全部不能の抗弁

 

賃借目的物の一部滅失の抗弁(一部抗弁)

 

 

土地明渡請求

請求の趣旨

被告は、原告に対し、甲土地を明け渡せ。

 

訴訟物

賃貸借契約の終了に基づく目的物返還請求権としての土地明渡請求権 1個

 

終了原因が複数でも、訴訟物は1個。

 ∵明渡請求権は賃貸借契約自体の効果。

 

請求原因

 ①賃貸借契約の成立

  ⅰ 目的物

  ⅱ 賃料

 ②基づく引渡し

 ③賃貸借契約の終了原因

  期間満了の場合

   ⅰ 期間の合意

   ⅱ 期間の経過

 

②は①の契約に基づく明渡請求の前提となるため必要

 

敷金の合意は不要∵601にない

 

被告の占有も不要∵債権的請求

 

終了原因としては他に解約申し入れ、債務不履行解除、無断転貸による解除がある。

 

記載

原告は、被告との間で、平成17年12月25日、甲土地を、賃料月額10万円で賃貸するとの合意をした。

原告は、被告に対し、平成17年12月25日、本件賃貸借契約に基づき、甲土地を引渡した。

原告と被告は、1の際、賃貸期間を同日から平成22年12月25日までと合意した。

平成22年12月25日は経過した。

 

抗弁

 

建物所有目的の抗弁

 要件事実

 ① 建物所有目的の合意(借地借家法3,9)

 

 記載

原告と被告とは、本件賃貸借契約に際し、甲土地を、被告が建築する予定の自宅の敷地として使用することを合意した。

 

 再抗弁    

一時使用の合意(借地借家法25)

 

 記載

原告と被告とは、本件賃貸借契約に際し、本件賃貸借契約の存続期間を1年に限るとの合意をした。

甲土地は被災した被告のために応急的に貸したものである。

 

30年の経過は再抗弁でなく、新たな請求原因

 ∵請求原因の効果を復活させない。

 

建物収去土地明渡請求

請求の趣旨

被告は、原告に対し、乙建物を収去して、甲土地を明け渡せ。

 

訴訟物

賃貸借契約の終了に基づく目的物返還請求権としての建物収去土地明渡請求権

 

賃借人は賃貸借契約の終了により「目的物を現状に修復した上賃貸人に引き渡す」という義務を負う。附属物の収去義務も、この目的物返還義務に含まれる。したがって、訴訟物が「建物収去」土地明渡請求権、となる。

 cf.所有権に基づく返還請求権としての建物収去土地明渡請求

 

請求原因

 ① 土地賃貸借契約の締結

 ② ①の契約に基づいて賃借人に土地を引渡したこと

 ③ ①の契約終了原因事実記載

 ④ ②の引渡し後、③の契約終了までの間に土地上に建物が付属させられ、③の契約終了時にその建物が存在していたこと

 

記載

Xは、平成19年10月10日、Yに対し、甲土地を賃料月額10万円、期間同日から5年間の約定で賃貸した。

Xは、同日、Yに対し、①の契約に基づき、甲土地を引き渡した。

平成24年10月9日は経過した。

②の引渡し後、③の契約終了までの間に甲土地上に乙建物が建築され、③の契約終了時に乙建物が存在していた。

 

抗弁

 

建物所有目的の抗弁 

 一時使用の再抗弁

 

黙示の更新の抗弁民法上の期間満了に対して)

 更新合意の不成立の再抗弁

 

法定更新の抗弁(借地借家法上の期間満了に対して)

 遅滞なき異議の再抗弁(借地借家法5条2項、1項) 

 

建物買取請求権の抗弁

 

建物明渡請求

請求の趣旨

被告は、原告に対し、乙建物を引き渡せ。

 

訴訟物

賃貸借契約終了に基づく目的物返還請求権としての建物明渡請求権 1個

 

終了原因が期間満了の場合の請求原因

 ① 建物賃貸借契約の締結

 ② ①に基づく引渡し

 ③ 賃貸借契約の存続期間の満了

 ④ ③の期間満了の1年前から6か月前までの間に、「更新拒絶の通知」をしたこと

 ⑤ ④の「更新拒絶の通知」時から③の期間満了までの間に更新を拒絶するについて「正当な事由」が存在したことを基礎づける評価根拠事実

 

建物の賃貸借であるから、借地借家法の適用が当然に基礎づけられる。

 

「更新拒絶の通知」をしなければ、契約は当然に「法定更新」されるため、④が必要。

 

終了原因が無断転貸による解除の場合の請求原因

 ① XY間で乙建物の賃貸借契約の締結

 ② ①の契約に基づく引渡し

 ③ YZ間で乙建物の賃貸借契約の締結

 ④ Zが③に基づく引渡しを受け、乙建物を使用収益したこと 

 ⑤ XのYに対する契約解除の意思表示

 

抗弁    

 

更新合意の抗弁(期間満了に対して)

 

法定更新の抗弁(期間満了に対して)

 遅滞なき異議の再抗弁

 

承諾の抗弁(無断転貸による解除に対して)

 

背信性の評価根拠事実(無断転貸による解除に対して)

 

敷金返還請求

 

請求の趣旨

 

被告は、原告に対し、50万円を支払え。

 

訴訟物

敷金契約に基づく敷金返還請求権 1個

 

請求原因

 ① 賃貸借契約の締結

 ② ①の契約に基づく引渡し

 ③ 敷金契約と敷金の授受

 ④ 賃貸借契約の終了原因

 ⑤ 賃借人から賃貸人への目的物の明渡し

 ⑥ 賃料全額を弁済した

 

敷金返還請求権は明渡しと同時に発生する(明渡が先履行)ため、⑤が必要。

 

敷金は未払い賃料を担保するところ、未払い賃料があれば当然に敷金の額から控除されるため、⑥が必要 

 

動産引渡請求訴訟

動産引渡請求

 

請求の趣旨

被告は、原告に対し、甲パソコンを引渡せ。

 

訴訟物

所有権に基づく返還請求権としての動産引渡請求権 1個

 

実体法上の要件

 A 所有

 ◦即時取得

 ⅰ 前主との取引行為

 ⅱ ⅰに基づく動産の占有取得

 ⅲ ⅱの占有取得が平穏、公然な取得であること

 ⅳ 取得者が善意であること

 ⅴ 取得者が無過失であること

 B 相手方占有

 

請求原因

 ① 所有

  ⅰ 前主との取引行為

  ⅱ ⅰに基づく占有取得

 ②相手方占有

 

ⅲ,ⅳは186Ⅰで不要

ⅴは188で前主の占有が適法であることが推定され、その結果、占有者の無過失が推定されるため、不要

 

記載

原告は、平成22年12月24日、Aから甲パソコンを代金20万円で買った。

原告は、同日、Aから1に基づき、甲パソコンの引渡しを受けた。

被告は、甲パソコンを占有している。

 

抗弁

 

悪意の抗弁

 要件事実

  ① 占有取得時に原告が前主でないことを知っていた、または疑っていた。

 

 記載

原告は、請求原因2の当時、Aが所有者でないことを知っていた。

 

過失の抗弁

 要件事実

  ① 過失の評価根拠事実(過失の評価根拠事実)

 

 記載

請求原因2の当時、甲パソコンには被告の住所と名前が書かれたシールが貼ってあった。

原告は、被告に対し、請求原因2に際し、甲パソコンの所有者について何の確認もしなかった。

 

対抗要件具備による所有権喪失の抗弁

 要件事実

  ① AY間売買

  ② ①に基づく引渡し(対抗要件具備)

 

  先立つ対抗要件具備の再抗弁

   要件事実

    ① AX売買に基づく引渡し

    ② ①の引渡しが、Yへの引渡しに先立つこと

 

代償請求

請求の趣旨

前項の強制執行の目的を達することができなかったときは、被告は、原告に対し、20万円を支払え。

 

訴訟物

所有権侵害による不法行為に基づく損害賠償請求権

 

請求原因

主たる請求の要件事実に加え、

 ③ 口頭弁論終結時の目的物の価額(「損害」)

 

「権利侵害」は「引渡請求権の存在」「執行不奏功の事実」前者は引き渡し請求の要件事実として明らかになり、後者は執行手続きで明らかになる。

 

「故意・過失」については口頭弁論終結時の返還義務発生と執行不奏功の事実により少なくとも過失が認められる。

 

「因果関係」は「権利侵害」と「損害」の主張に含まれる。