【論証】刑訴1捜査⑹起訴後の捜査
起訴された後には、起訴以前のような捜査が許されなくなることがあり得ます。
起訴後の捜査
【論証:起訴後の捜査】
捜査は第一次的には起訴・不起訴の決定を目的とするが、捜査の目的には公判の準備も含まれるから、起訴後においてもこの目的達成のため必要に応じて捜査を行うことは許され得る。もっとも、起訴後には、①公判中心主義の要請と②被告人の当事者としての地位にかんがみ、起訴前とは異なる配慮が必要となる。すなわち、①から、事案の真相解明は原則として裁判所の下でなされるべきである。また、②から、被告人には手続の主体的当事者としての地位が尊重されるべきである。
第一回公判期日前には、証人尋問請求は明文上行うことができる(226条、227条)。捜索・差押え、検証については、被告人側の証拠保全請求(179条)とのバランス上、「あらかじめ証拠を保全しておかなければその証拠を使用することが困難な事情があるとき」に、令状を得て行うことができると解する。任意捜査は制限なく行うことができる。
第一回公判期日後には、証人尋問請求は明文上行うことができない。また、捜索・差押え、検証についても、明文はないが、公判中心主義の観点から、捜査機関が行うことは許されないと解する。任意捜査は基本的に可能であるが、①②の観点から、制限され得る。*1
基本的に①②の観点から制限され得る、という発想を持っていればいいでしょう。明文上行うことができる/できないとされているものも現場で条文を引けるようにしておけるとよりよいと思います。
被告人の取調べ
【論証:被告人の取調べ】
【論証:起訴後の捜査(第一段落)】
起訴され完全に対等の当事者となったはずの被告人が捜査機関による取調べの客体とされるのは、②の観点から問題があり、許されないとする見解もある。また、198条1項が取調べの対象に「被告人」を含めていないことから、強制処分法定主義に反し、許されないとする見解もある。
しかし、まず、取調受忍義務がない以上、取調べは任意処分と解すべきであるから、197条1項本文に基づいて被告人の取調べを行うことが許され得る。したがって、強制処分法定主義には反しない。
また、②の観点から捜査機関が被告人を取り調べることはなるべく避けなければならないが、弁護人の立会いがある場合には、当事者たる被告人の地位が尊重されているといえるため、被告人の取調べは弁護人の立会いがある場合に限って許容されると解する。*2
取調受忍義務肯定説からは取調受忍義務を課す取調べは強制処分法定主義に反し、許されないことになります。論証内では省略しましたが、取調受忍義務の有無について展開することも考えられます。