要件事実4代理・履行遅滞に基づく損害賠償・債権者代位・保証・準消費貸借
代理に関する請求
有権代理
請求の趣旨
被告は、原告に対し、250万円を支払え。
訴訟物
XY間の売買契約に基づく代金支払請求権 1個
請求原因
① 代理人と相手方との法律行為
③ 先立つ代理権授与
①は代理人が法律行為をすることによって法律効果が本人に帰属するため、必要。
②は99Ⅰにより必要。
③先立つ代理権が存在して初めて有権代理となるため、代理権授与行為が代理人による法律行為より前になされていることが必要。
無権代理の主張は③の否認。
顕名に代えて民法100条ただし書きの主張をする場合…②に代えて、㋐代理人の代理意思の存在、㋑㋐を相手方が知っていたか、知りえたことを主張。
代理行為の相手方が代理権授与に代えて追認を主張する場合、追認は代理権授与と選択的な主張となる。
記載
Aは、平成25年3月6日、被告に対し、甲壺を代金250万円で売った。
Aは、1の契約の際、原告のためにすることを示した。
原告は、平成24年9月9日、Aに対し、1の契約締結についての代理権を授与した。
表見代理
代理権授与表示による表見代理
請求原因
①②に加え、
③Xが、Yに対し、Zに特定の事項について代理権を授与したことを、①の法律行為に先立って表示したこと
記載
Yは、平成25年2月7日、Zに対し、甲土地を1000万円で売った。
Zは、①の契約の際、Xのためにすることを示した。
Xは、①の契約に先立って、Yに対し、Zを介して、XがZに甲土地の売買を委任する旨記載したX作成の委任状を示した。
抗弁
悪意または過失の抗弁
代理権授与表示があれば、代理権があると信じるのが通常であるから、抗弁に回る。
権限外の行為の表見代理
請求原因
①②に加え、
㋐当該法律行為の際、相手方が代理人に代理権があると信じたこと
㋑当該法律行為の際、㋐のように信じたことについて正当理由があることを基礎づける評価根拠事実
㋒基本代理権の発生原因事実
権限外の行為の表見代理の効果を発生させる根拠は第三者の信頼にあるため、効力発生原因としてその効果を主張する者が㋐及び㋑を主張する必要がある。
記載
Zは、平成25年2月7日、Yに対して、甲土地を1000万円で売った。
Zは、①の契約の際、Xのためにすることを示した。
Yは、①の契約の際、Zに①の契約締結の代理権があると信じた。
Zは、①の契約の際、Xの実印と印鑑登録証明書を持っていた。
Xは、①の契約に先立ち、Zに対し、甲土地を賃貸する権限を与えていた。
109条との重畳適用の場合、①②㋐㋑に加え、㋒Xが、当該法律行為以外のある特定の事項についてZに代理権を授与した旨を当該法律行為に先立って表示したことを主張する。
代理権消滅後の表見代理
代理権消滅の抗弁
民法111条、651条以下
予備的請求原因
112条によっても有権代理の効果が復活するわけではないため、再抗弁ではなく、予備的請求原因となる。
① 代理権の消滅原因事実の存在を知らなかったこと
抗弁
悪意または過失の抗弁
代理権の消滅原因事実の存在を知らなかったことに過失があることを基礎づける評価根拠事実
無権代理人に対する請求
訴訟物
民法117条1項に基づく履行(損害賠償)請求権
請求原因
① YとZが契約を締結したこと
② ①の契約の際、Zが顕名をしたこと
抗弁
代理権の授与
追認
悪意有過失
Zの行為無能力
履行遅滞に基づく損害賠償請求
一般的な要件事実
請求の趣旨
被告は、原告に対し、200万円を支払え。
訴訟物
損害賠償請求権 1個
実体法上の要件
A 債権発生原因事実
B 履行可能
C 履行期の経過
D 債務者の不履行
E 帰責性
F 違法性
G 損害の発生と数額
請求原因
① 債権発生原因事実
② 履行期の経過
③ 損害の発生と数額
Bは通常可能なので不要。
Dは弁済が抗弁であるため不要。
Eは、不履行があれば帰責性があるのが通常であり、419Ⅲから帰責性は抗弁であると解されるため不要。
Fは通常違法なので不要(同時履行の抗弁が付着しているときなどは、以下の売買代金債権の場合のようになることに注意)。
原債権が売買代金債権の場合の要件事実
請求原因
① 売買契約の締結
② 履行期の経過
ⅰ 履行期の定め
ⅱ 履行期の経過
④´ 目的物の引渡し
③は原債権が金銭債権であることから、原則不要(419Ⅱ)。ただし、約定利率が法定利率より高い場合には利率の定めの主張が必要(419Ⅰただし書き)
①により、同時履行の抗弁権の存在効果(遅滞の違法性阻却)が現れている。そこで、弁済の提供の主張が必要。→④
575Ⅱの「利息」は遅延損害金であると解される。したがって、売り主の履行遅滞に基づく損害賠償請求には目的物の引渡しが必要。④は④´に吸収される。→④´
債権者代位訴訟
請求の趣旨
被告は、原告に対し、600万円を支払え。
訴訟物
AY間の売買契約に基づく代金支払請求権 1個
実体法上の要件
A 被保全債権の発生原因事実
B 保全の必要性
C 被代位権理の発生原因事実
D 債務者が権利行使をしていないこと
E 被代位権理が一身専属権でないこと
請求原因
① 被保全債権の発生原因事実
② 保全の必要性
③ 被代位権理の発生原因事実
Aは423Ⅱにより必要。→①
Bは通常債務者の無資力という事実により基礎づけられる。転用事例においては無資力であることは要求されない。
Dは抗弁で主張されるべき事実であるため、不要。
Eは③が主張された時点で明らかになるので不要。事実でないので抗弁にもならない。
①、②は代位権の発生原因であり原告適格を基礎づける事実であるから、これが認められない場合には訴えが却下される。③は訴訟物を基礎づける事実であるから、これが認められないと請求が棄却される。
記載
原告は、平成23年12月22日、Aに対し、甲土地を代金1000万円で売った。
Aは、被告に対する600万円の売買代金債権以外には、資産を有していない。
Aは、平成21年11月5日、被告に対し、乙建物を代金600万円で売った。
保証債務履行請求
請求の趣旨
被告は、原告に対し、1000万円及びこれに対する平成25年2月10日から支払い済みまで年5分の割合による金員を支払え。
訴訟物
保証契約に基づく保証債務履行請求権 1個
「連帯」は保証債務の補充性を奪う特約であると解されるから、訴訟物としては保証契約に基づく保証債務履行請求権で足りる。
請求原因
① 主債務の発生原因事実
② 保証契約を締結したこと
③ 保証意思が書面によること
連帯の約定は保証債務の本質的な要素でないため、不要。催告・検索の抗弁が提出されたときの再抗弁となる。
記載
Xは、平成24年2月10日、500万円を弁済期平成25年2月10日とする約定で貸し付けた。
XとYは、同日、Yが①の借入金債務を保証する旨合意した。
Yの②の意思表示は保証契約書によってされた。
抗弁
主債務についての抗弁
(主債務の)消滅時効の抗弁
主債務者の時効援用権の喪失は相対効を生じるに過ぎないから再抗弁とならない。
弁済拒絶の抗弁(相殺)
要件事実
① 自働債権の発生原因事実(主債務者の)
② 同時履行の抗弁権を消滅させる事実
③ 保証人の権利主張
保証人は主たる債務者の債権の処分権原までも有するものではないから、相殺によって消滅する限度で弁済を拒絶できるにとどまる。
権利抗弁であるから、③が必要。
記載
Aは、平成24年12月1日、Xに対し、甲自動車を代金500万円で売った。
Aは、同日、甲自動車をXに引き渡した。
Yは、AがXに対して有する①の売買代金債権500万円をもって、相殺によりXのAに対する本件貸金債権500万円と対当額において消滅する限度で、本件保証債務の支払いを拒絶する。
準消費貸借契約に基づく貸金返還請求
請求の趣旨
被告は、原告に対し、200万円を支払え。
訴訟物
準消費貸借契約の終了に基づく貸金返還請求権 1個
請求原因
① 準消費貸借の合意
② 返還時期の定め
③ 返還時期の到来
貸主が旧債務の存在を立証するのは困難であること、準消費貸借の合意があれば旧債務の存在は推認されることから、借主(被告)が旧債務の不存在の主張・立証責任を負う。
原告において旧債務を特定することは必要。
記載
XとYは、平成24年2月20日、XがYに対し平成24年1月20日に甲自動車を売ったことによる売買代金債務200万円を消費貸借の目的とし、弁済期を平成25年2月20日とすることを合意した。
平成25年2月20日は到来した。
抗弁
旧債務の不存在
請求原因では旧債務の特定をしているに過ぎないため、請求原因に対する否認ではなく抗弁となる(請求原因と両立する)。