要件事実5請負・債権譲渡
請負契約に基づく請求
請求の趣旨
被告は、原告に対し、100万円を支払え。
訴訟物
請負契約に基づく報酬請求権
請求原因
① 請負契約の締結
② 仕事の完成
仕事の内容と報酬金額(報酬合意の方法)を具体的に特定する必要あり。
仕事の完成は先履行(民法633条)であるから、報酬請求権を行使するためには②が必要。
記載
Xは、平成24年10月1日、Yとの間で、特注の金型の政策を代金50万円で請け負った。
Xは、①の製作を完成させた。
抗弁
解除の抗弁(民法635条)
要件事実
① 仕事の目的物に瑕疵があること
② 解除の意思表示
本来あってはならない瑕疵の存在が立証される場合には、目的不達成は請負人側で主張・立証すべきであるから、抗弁に回る。
建物その他の土地の工作物でないこと、は請求原因の中で明らかになるから再抗弁にもならない。
同時履行の抗弁(損害賠償請求権と、民法634条2項、533条)
要件事実
① 仕事の目的物に瑕疵があること
② それによって注文者に損害が発生したこと及びその額
③ 瑕疵修補に代えて損害賠償を請求するとの意思表示
④ 損害賠償がされるまで報酬の支払を拒絶するとの権利行使
記載
Xの製作した金型には、ゆがみが生じていた。
Yは、①の瑕疵により30万円の損害を被った。
Yは、平成25年1月10日、Xに対し、瑕疵修補に代えて、損害賠償を請求する意思表示をした。
Yは、Xが30万円の損害賠償金を支払うまで、報酬の支払を拒絶する。
相殺の抗弁
要件事実
① 仕事の目的物に瑕疵があること
② それによって注文者に損害が発生したこと及びその額
③ 瑕疵修補に代えて損害賠償を請求するとの意思表示
④ 相殺の意思表示
清算的解決であるから、同時履行の抗弁権の存在効果は相殺の妨げとならない。
債権譲渡に関する請求
債権譲渡
請求の趣旨
被告は、原告に対し、50万円を支払え。
訴訟物
XのYに対するAY間の売買契約に基づく売買代金支払請求権
請求原因
① 譲受債権の発生原因事実
② ①の債権の取得原因事実
債権譲渡行為の独自性は否定。②としては債権行為の要件事実のみを主張すれば足りる。
記載
Aは、平成24年10月1日、Yに対し、甲自動車を50万円で売った(以下、「本件売買契約」という)。
Aは、平成25年1月10日、Xに対し、①の売買代金債権を代金30万円で売った(以下、「AX間の債権譲渡」という)。
抗弁
譲渡禁止特約の抗弁
要件事実
① 譲渡禁止特約の合意
② Xが債権を譲り受けた際、①を知っていたこと、または、知らなかったことにつき重大な過失があったことを基礎づける評価根拠事実
債権は譲渡自由が原則であるから、債務者が②を主張・立証することが必要。
記載
Yは、Aとの間で、本件売買契約の際、その代金債権の譲渡を禁止するとの合意をした。
Xは、AX間の債権譲渡の際、本件売買契約の契約書に債権譲渡の禁止が記載されているのに、それを確認しなかった。
承諾の再抗弁
譲渡人について生じた事由に基づく抗弁
先立つ対抗要件具備の再抗弁
要件事実
当該事由に先立ち、債権譲渡につき、AがYに対し譲渡の通知をしたこと
または
当該事由に先立ち、債権譲渡につき、YがAまたはXに対し承諾したこと
異議をとどめない承諾の再抗弁
要件事実
譲渡人について生じた当該事由の後に、債権譲渡につき、Yが異議をとどめないで承諾したこと
悪意有過失の再々抗弁
債務者対抗要件の抗弁
要件事実
対抗要件の有無を問題とし、これを争うとの権利主張
相手方の対抗要件の欠缺を主張する正当な利益を有する第三者であることを基礎づける事実は請求原因における譲受債権の発生原因において既に現れているため、不要。
記載
Yは、AX間の債権譲渡につき、AがYに通知しまたはYが承諾するまで、Xを債権者と認めない。
債務者対抗要件具備の再抗弁
要件事実
債権譲渡後にAがYに対し譲渡の通知をしたこと
または
債権譲渡につきYがAまたはXに承諾したこと
承諾は事前のものも有効である。
Yは、Zにも譲渡されている以上、Xが第三者対抗要件を具備するまで、Xの請求を拒絶するという主張が可能。
いずれの譲渡についても単なる通知又は承諾がされたにすぎないときは、債務者は、いずれの譲受人に対しても弁済を拒絶することができる。
要件事実
① Aから第三者(Z)への当該債権の移転原因事実
② 上記債権譲渡について債務者対抗要件が具備されたこと
③ AからXへの債権譲渡につき、AがYに確定日付ある証書による譲渡の通知をしまたはYが確定日付ある証書による承諾をしない限りXを債権者と認めないとの権利主張
債権の二重譲渡により、譲受人相互の優先関係が問題となるのは、譲受人に債務者対抗要件が具備された場合であるから、②が必要。
記載
Aは、平成25年1月30日、Zに対し、本件売買代金債権を代金30万円で売った(以下、「AZ間の債権譲渡」という)。
Aは、同日、Yに対し、AZ間の債権譲渡を通知した。
Yは、AX間の債権譲渡につき、AがYに確定日付ある証書による譲渡の通知をしまたはYが確定日付ある証書による承諾をしない限りXを債権者と認めない。
債権喪失の抗弁
要件事実
① Aから第三者(Z)への当該債権の移転原因事実
② 当該第三者への債権譲渡につき確定日付のある証書による通知または承諾がされたこと
記載
Aは、平成25年1月15日、Zに対し、本件売買代金債権を代金30万円で売った。
Aは、平成25年1月30日、Yに対し、内容証明郵便により①の債権譲渡を通知した。
二重譲渡を受けた譲受人相互間で優先していなくても(優劣がなくても)、債務者との関係では債務の全額を請求できるため、Xは対抗要件具備がZに先立つことまで主張・立証する必要はない。
二重譲受人に対する弁済の抗弁
要件事実
① 他の譲受人の債権の取得原因事実
② 譲受債権につき債務の本旨に従った給付がされたこと
Xが第三者対抗要件を具備したことはいまだ現れていないので、ZがXに優先することを示す必要はない。
準占有者に対する弁済(抗弁)
要件事実
① 準占有者であることを基礎づける事実
② 弁済者の善意
③ 弁済者の無過失を基礎づける評価根拠事実
④ 準占有者に対する債務の履行
準占有者に対する弁済が有効であれば、債権者は債務者に対する権利を失うから、弁済者において自己の善意・無過失を主張・立証しなければならない。
記載
Yは、平成24年12月10日、Aに対し、本件請負代金債務の履行として、400万円を支払った。
Aは、①の際、Yに対し、X名義の領収書を示して、本件請負代金400万円の支払いを請求した。
Yは、①の当時、Aが本件請負代金の受領権限があると信じていた。
無過失の評価根拠事実
㋐ X名義の領収書は、平成24年8月1日と10月1日に各300万円をYに支払った時に交付された領収書と同一の用紙である。
㋑ Yは、本件工事に関する交渉をAとしていた。