司法試験・予備試験実践論証

予備試験合格・司法試験総合42位合格者作成の論証集。予備校講座の一歩先へ。

【論証】刑訴1捜査⑹起訴後の捜査

起訴された後には、起訴以前のような捜査が許されなくなることがあり得ます。 起訴後の捜査 被告人の取調べ 起訴後の捜査 【論証:起訴後の捜査】 捜査は第一次的には起訴・不起訴の決定を目的とするが、捜査の目的には公判の準備も含まれるから、起訴後にお…

【論証】刑訴1捜査⑸被疑者の防御

この分野において論文で出題可能性が高いのは接見交通権だと考えられます。ここでは、秘密交通権、面会接見、接見指定について検討します。 秘密交通権 面会接見 接見指定 要件該当性 「捜査の必要があるとき」 「公訴の提起前に限り」 指定内容 秘密交通権 …

【論証】刑訴1捜査⑷証拠収集Ⅲ

ここでは、前回までに扱えなかった、領置及び取調べについて検討します。 領置 取調べ 身体拘束中でない被疑者の取調べ 身体拘束中の被疑者の取調べ 領置 捜査機関は、「被疑者その他の者が遺留した物」、所有者等が「任意に提出した物」を無令状で領置する…

【論証】刑訴1捜査⑷証拠収集Ⅱ

前回の記事では、令状に基づく捜査について検討しました。刑訴法は、令状がない場合であっても、「逮捕する場合」には、捜索・差押えを行うことができると定めています(220条)。 そこで、今回は、この逮捕に伴う無令状捜索・差押えについて検討していこう…

【論証】刑訴1捜査⑷証拠収集Ⅰ

犯罪捜査のために証拠を収集する手段として、刑訴法は「差押え」「捜索」「検証」(218条~220条)「領置」(221条)「鑑定」(223条以下)「取調べ」(198条、223条)等を定めています。 ここでは、令状によって行われる捜索・差押え(検証)についてみてい…

【論証】刑訴1捜査⑶逮捕・勾留Ⅱ

ここでは、逮捕・勾留にかかわる問題として、逮捕前置主義(違法逮捕後の勾留請求も含む)、事件単位の原則、一罪一逮捕一勾留の原則(再逮捕・再勾留も含む)、別件逮捕・勾留について検討します。 逮捕前置主義 違法逮捕後の勾留請求 事件単位の原則 一罪…

【論証】刑訴1捜査⑶逮捕・勾留Ⅰ

被疑者の逃亡や罪証隠滅を防止しつつ捜査を遂行するための手段として、法は逮捕及び勾留を定めています。今回は逮捕・勾留の要件を中心に検討します。 逮捕 通常逮捕 現行犯逮捕 現行犯逮捕 準現行犯逮捕 緊急逮捕 勾留 逮捕 逮捕は、被疑者を比較的短時間拘…

【論証】刑訴1捜査⑵捜査の端緒

捜査機関が捜査を行うのは「犯罪があると思料したとき」(189条2項)です。そして、その前提として犯罪発生の情報を何らかの方法で取得する必要があります。このように、捜査機関が特定の犯罪事件の存在に関する嫌疑を抱くきっかけのことを捜査の端緒といい…

【論証】刑訴1捜査⑴捜査法の基本枠組みⅡ

前回の記事で強制処分該当性と任意捜査の限界について検討したので、今回はこれらの判断枠組みによって実際の捜査方法がどのように判断されるのかを見てみましょう。 shihouyobi.hatenablog.com 具体的には、写真・ビデオ撮影、秘密録音、GPS捜査、おとり捜…

【論証】刑訴1捜査⑴捜査法の基本枠組みⅠ

強制処分 任意捜査の限界 強制処分該当性の判断及び任意捜査の限界は刑訴の最重要論点の一つであり、司法試験、予備試験でも何度も出題されています。 強制処分を用いた捜査を強制捜査といいます。 強制処分 「強制の処分」(197条1項但書、以下強制処分)に…

【目次】刑法総論

1 構成要件 ⑴ 実行行為 ⑵ 因果関係 ⑶ 構成要件的故意 ⑷ 過失 2 違法性 ⑴ 正当防衛 ⑵ 緊急避難・その他の違法性阻却事由 3 責任 4 未遂 5 共犯 ⑴ 共同正犯 ⑵ 教唆犯・幇助犯 ⑶ 共犯の諸問題 1 構成要件 ⑴ 実行行為 shihouyobi.hatenablog.com ⑵ 因果関係 shih…

【論証】刑法総論5共犯⑶共犯の諸問題

共犯における問題として、身分が必要とされる犯罪について身分のない者が関与した場合(身分犯と共犯)、共犯者間に認識の齟齬がある場合(共犯と錯誤)、実行行為の一部にのみ関与した者の罪責(承継的共犯)、共犯関係が解消される場合(共犯関係の解消)…

【論証】刑法総論5共犯⑵教唆犯・幇助犯

教唆犯 ①教唆 ②①に基づく実行行為 ③故意 幇助犯 ①幇助 ②①に基づく実行行為 ③故意 教唆犯 教唆犯の成立には①教唆②①に基づく実行行為③故意が必要です。 ①教唆 教唆とは、他人に特定の犯罪を実行する決意を生じさせることをいいます。方法・手段を問わず、黙示…

【論証】刑法総論5共犯⑴共同正犯

共犯 共同正犯 共謀共同正犯の成否 共同正犯の成立要件 共謀の射程 共同正犯の違法・責任の連帯 過失犯の共同正犯 結果的加重犯の共同正犯 予備罪の共同正犯 片面的共同正犯 共犯 共同正犯の各論点について検討する前提として、共犯の処罰根拠、及び共犯の従…

【論証】刑法総論4未遂

未遂で問題となるのは、主に実行の着手(43条本文)が認められるか、中止犯が成立するか、不能犯との区別といった点です。 実行の着手 離隔犯 間接正犯の実行の着手 中止犯 「中止した」(中止行為) 不作為による中止 作為による中止 中止行為の因果関係 「…

【論証】刑法総論3責任

現在の通説は、責任とは他行為可能性・意思の自由を基礎とした非難可能性であると考えています。*1 そして、責任の要素として、責任能力、責任故意・過失、違法性の意識の可能性、期待可能性を上げることができます(違法性の意識の可能性を責任故意の要素で…

【論証】刑法総論2違法性⑵緊急避難・その他の違法性阻却事由

緊急避難については、大部分正当防衛と同様の議論が当てはまります(「現在の危難」は侵害の急迫性と同様ですし、「避難の意思」は「防衛の意思」と同様です)。 もっとも、緊急避難に特有の、あるいは論じ方が正当防衛とは異なる論点として、強要による緊急…

要件事実6相続・詐害行為取消・不当利得

相続 詐害行為取消 抗弁 不当利得返還請求 給付型 侵害型 相続 要件事実(相続による権利取得を主張) ① 被相続人の死亡 ② 相続人であることを基礎づける事実 他に相続人がいることは単独相続人が争う相手方が主張・立証すべき(非のみ説)。 記載(時効取得…

要件事実5請負・債権譲渡

請負契約に基づく請求 抗弁 債権譲渡に関する請求 債権譲渡 抗弁 準占有者に対する弁済(抗弁) 請負契約に基づく請求 請求の趣旨 被告は、原告に対し、100万円を支払え。 訴訟物 請負契約に基づく報酬請求権 請求原因 ① 請負契約の締結 ② 仕事の完成 仕事の…

要件事実4代理・履行遅滞に基づく損害賠償・債権者代位・保証・準消費貸借

代理に関する請求 有権代理 表見代理 代理権授与表示による表見代理 抗弁 権限外の行為の表見代理 代理権消滅後の表見代理 抗弁 無権代理人に対する請求 抗弁 履行遅滞に基づく損害賠償請求 一般的な要件事実 原債権が売買代金債権の場合の要件事実 債権者代…

要件事実3賃貸借・動産

賃貸借契約に関する請求 賃料請求 抗弁 土地明渡請求 抗弁 建物収去土地明渡請求 抗弁 建物明渡請求 抗弁 敷金返還請求 動産引渡請求訴訟 動産引渡請求 抗弁 代償請求 賃貸借契約に関する請求 賃料請求 請求の趣旨 被告は、原告に対し、15万円(及びこれに対…

要件事実2所有権に基づく土地明渡請求・不動産登記手続請求

所有権に基づく不動産明渡請求訴訟 土地明渡請求 抗弁 建物収去土地明渡請求 抗弁 建物退去土地明渡請求 抗弁 不動産登記手続請求訴訟 所有権移転登記抹消登記手続請求 抗弁 所有権移転登記手続請求 抵当権設定登記抹消登記手続請求 抗弁 所有権に基づく不動…

要件事実1売買・貸金

要件事実は、現段階では現行法に対応したものになっています。 売買契約に基づく代金支払請求訴訟 売買代金支払請求 記載 抗弁 消滅時効の抗弁 履行期限の抗弁 同時履行の抗弁 相殺の抗弁 代物弁済の抗弁 民法総則に関する抗弁 債務不履行解除の抗弁 瑕疵担…

憲法 選挙 権利の論理と制度の論理

選挙にかかわる憲法問題として、①選挙権(の行使の機会)の制限、②選挙運動の制限、③投票価値の平等などがあげられます。 選挙権にかかわる問題では、権利の論理と制度の論理が対立します。 権利の論理とは、通常の自由権のような審査方法をとるべきとする論…

【論証】刑法総論1構成要件⑷過失

過失犯については、「過失」を結果発生を予見できたにもかかわらず予見しなかったこととする旧過失論と予見義務違反に加えて結果回避義務違反をも過失の要件とする新過失論が対立しています。 旧過失論に立つと過失は主観的要素であり、責任要素であると理解…

【論証】刑法総論2違法性⑴正当防衛

正当防衛の要件は、①侵害の急迫性②侵害の不正性(①②は「急迫不正の侵害」にあたるかの要件)③反撃行為性(「…に対して」)④自己又は他人の権利を防衛する行為であること(「自己又は他人の権利を防衛するため」)⑤防衛行為としての正当性(「やむを得ずにし…

【論証】会社法3株式⑴総則Ⅱ-株主平等原則・利益供与の禁止-

株式総則の部分で重要な論点として、株主平等原則(109条1項)と利益供与の禁止(120条)があります。 株主平等原則 株主平等原則の基本 株主平等原則の例外 利益供与の禁止 利益供与の禁止の基本 「株主の権利の行使に関し」要件―株式譲渡― 例外的に許容さ…

【論証】会社法3株式⑴総則Ⅰ-株式の共有-

株式の共有(正確には準共有(民法264条)ですが、会社法も「共有」としている(106条参照)ので「共有」で構いません。)については、権利行使者(106条本文)の指定方法、会社の同意(106条但書)、共有株主の原告適格、権利行使者による議決権の不統一行…

【論証】刑法総論1構成要件⑶構成要件的故意Ⅱ

ここでは、前回の記事で扱った、具体的事実の錯誤、因果関係の錯誤、抽象的事実の錯誤を前提として、遅すぎた構成要件の実現、早すぎた構成要件の実現(実行の着手の問題ですが、故意が絡んでくるため、ここでも紹介します)について検討します。 前回の記事…

【論証】刑法総論1構成要件⑶構成要件的故意Ⅰ

構成要件的故意とは、客観的構成要件要素に該当する事実の認識・認容をいいます。 構成要件的故意のところで生じる問題として、まず規範的構成要件要素の認識、認識事実と実現事実との錯誤(具体的事実の錯誤、因果関係の錯誤、抽象的事実の錯誤)を検討しま…